新技術からスタンダードな技術へ

特殊高所技術(SK-080009-VE)は、2019年3月末をもってNETIS掲載期間が終了致しました。(※1)

技術登録に際し、アドバイスをしていただいた担当官様、業務で「特殊高所技術」を採用していただいた発注者様、活用効果調査票を提出していただいたお客様、業務でご活用いただいたお客様、皆様に大変感謝しております。
また、「特殊高所技術」を現場で安全に運用してくださっているTKGS協会員の皆様や、TKGの仲間たち、また直接的・間接的問わず、応援してくださった全ての皆様に感謝します。

本当にありがとうございます。

「特殊高所技術」のNETIS登録は、2008年度に国土交通省 四国地方整備局 四国技術事務所がテーマ設定技術募集をされたものに応募したところから始まりました。
公募テーマ「橋面上の交通規制を伴わず、安全に点検が出来る橋梁点検足場技術」に対して応募した結果、「特殊高所技術」(足場や重機を必要とせず近接目視点検する技術)は施行調査対象技術に選定していただきました。

試行調査は、徳島県にある実際の橋梁を用いて行われ、比較対象従来技術であった吊足場工法より安全性含め、「優れる」と評価していただきました。

技術の位置付けとしては、2009年度より『公共事業での活用実績は少ないものの、有用な技術であり、継続的な活用効果調査を行うべき』という意味で、「少実績優良技術」と位置付けて頂きました。番号は「SK-080009-V」となり、末尾にV記号が付与され、これ以降、橋梁定期点検業務や、ダムの補修工事と言った業務の特記仕様書に、条件明示として『特殊高所技術 (NETIS登録SK-080009-V)を用いること』と技術の指定をしていただくことも増え、業務をご依頼いただく機会も増えることとなりました。
当時は、2007年8月にアメリカ中西部で起きた供用中の橋梁が崩落する衝撃的な事故(※2)の発生や、日本国内で起きた鋼トラス橋の斜材が、腐食により相次いで破断する事案が発生し、橋梁をはじめとした日本国内の社会インフラの健全性維持・長寿命化という社会的要求や機運が高まり始めた時期でもあります。(※3)

道路橋の今後の点検・補修・架替の時期を明示した計画を作成する「長寿命化修繕計画事業費補助制度」が創設されたのと同時期に、「特殊高所技術」が評価技術としてNETIS登録されたことになります。

当時は、遠望目視での橋梁点検が認められていましたが、2012年に発生した笹子トンネル天井板崩落事故をきっかけに点検対象への近接の重要性が見直され、2014年に改定された国土交通省発行の橋梁定期点検要領(H26要領)に、「近接目視」の要求が盛り込まれました

2009年度に小実績優良技術としてV評価を受けた「特殊高所技術」ですが、皆様のご支援により、新技術を活用した際に評価していただく「活用効果調査」を参考にして、2016年度に近畿地方整備局 新技術活用評価会議の場で、「活用促進技術」として評価され「VE」の評価をいただくことが出来ました。

「活用促進技術」とは、【一定数の活用効果評価により、継続調査の要件にあてはまらず、次回以降の評価が不要である。】という意味です。
つまり、比較対象技術である足場よりも、安全性・工程・施行性・経済性・環境の項目全てで「優れる」と評価していただきました。(品質・出来形は同等)

ロープ等を使った方法で、産学官からなる有識者で構成された新技術活用評価会議によって安全性等を評価された工法は、「特殊高所技術」しかありません。

NETIS掲載から10年が経ち、当初、新技術だった「特殊高所技術」も、目新しい技術ではなくなりました。
ご活用いただいている皆様のおかげで、実績と評価を重ねることができました。

さらに安全性を高め、安心して活用していただける確固たる技術であり続けられるように、引き続き精進してまいります。

今後ともよろしくお願い致します。

※1
『新技術活用システム』は、国土交通省において新技術情報提供システム(NETIS)に登録された新技術の中で、優れた技術を公共工事において積極的に活用していくためのシステムです。活用された技術が調査・評価されることによって技術のスパイラルアップに繋がります。
※2
2007年8月2日、アメリカ中西部ミネソタ州ミネアポリス市のミシシッピ川にかかるミネソタ州が管理する幹線道路(インターステートハイウェイ)I-35Wの渡河部の鋼道路橋が、通勤時間帯(現地時間8月1日午後6時5分)に突如多数の車両を載せたまま崩壊した事故。崩壊したトラス橋部分の長さ324m、被害車両:111台(うち河川からの回収17台)、死者13人、負傷者145人となった痛ましい事故。
※3
日本の道路橋は約8割以上が地方公共団体管理の橋梁だが、国土交通省がミネソタ州の落橋事故を受けて、日本国内の橋梁点検の現状を調査したところ、市区町村では約9割の自治体が定期的な道路橋点検を実施していないなどの実態が浮かび上がった。